防災教育とは?家庭でできる防災教育の始め方と子どもへの伝え方

地震や台風、大雨などの災害が起きたとき、子どもがいつも家族と一緒にいるとは限りません。
学校への登下校中や遊びに出ているとき、自宅で留守番をしているときに災害が発生することもあります。
そのような場面で、自分の身を守るためにどう行動すればよいのかを学ぶのが「防災教育」です。
防災教育というと、学校や地域で行う特別な授業や避難訓練をイメージするかもしれません。
しかし、家庭でも難しい教材を用意せず、日常の会話や散歩、買い物などを通じて始められます。
この記事では、防災教育の目的や家庭で取り組む大切さ、子どもの年齢に合わせた進め方を分かりやすく紹介します。
防災教育とは?
防災教育とは、災害について正しい知識を身につけ、自分や周囲の人の命を守るために必要な判断力と行動力を育てる取り組みです。
内閣府は、防災教育について、災害が発生する仕組みや地域の実情、日頃の備え、災害時の対処方法を学び、それを実際の行動につなげることが必要だと説明しています。
防災教育では、単に災害の怖さを教えるだけではありません。
主に次のようなことを学びます。
- 地震や大雨などの災害が起きる仕組み
- 自分の住む地域にどのような危険があるか
- 災害に備えて準備するもの
- 災害が起きたときに身を守る方法
- 避難場所や避難経路
- 家族との連絡方法
- 周りの人と助け合うこと
最も大切なのは、子ども自身が状況を見て考え、安全な行動を選べるようになることです。
防災教育の目的
防災教育の目的は、知識を覚えることだけではありません。
災害が起きたときに、学んだことを実際の行動に移せるようになることが重要です。
文部科学省の防災教育資料では、子どもへの安全教育は、将来につながる安全意識や能力の基礎をつくるものであり、長く継続することで安全に関する考え方の定着が期待できるとしています。
防災教育によって、次のような力を育てます。
危険に気づく力
周囲を見て、落下物や倒れそうな家具、川や崖などの危険を見つける力です。
自分で考える力
大人の指示を待つだけでなく、その場の状況に応じて何をすべきか考える力です。
命を守る行動を取る力
地震の揺れから頭を守る、大雨のときは川へ近づかない、津波の危険があれば高い場所へ逃げるなど、適切に行動する力です。
周囲と助け合う力
自分の安全を確保したうえで、家族や友達、地域の人と協力する力です。
家庭でも防災教育が必要な理由

学校では避難訓練や防災に関する授業が行われています。
しかし、子どもが生活する場所は学校だけではありません。
自宅、通学路、公園、習い事の場所、買い物先など、災害が起こる可能性のある場所はたくさんあります。
家庭で防災について話し合うことで、学校で学んだ内容を日常生活と結びつけられます。
例えば、
「家で地震が起きたら、どこが安全かな」
「通学途中で大雨になったら、どこへ行けばいいかな」
と質問することで、子どもが自分で考えるきっかけになります。
また、子どもと話すことによって、大人も自宅の危険な場所や備蓄不足に気づくことがあります。
家庭での防災教育は、子どもだけでなく家族全員の防災意識を高める取り組みです。
家庭でできる防災教育の始め方
防災教育は、堅苦しい勉強にする必要はありません。
身近なことから少しずつ始めましょう。
1.自宅の安全な場所を一緒に探す
まずは、自宅の中で地震が起きた場合を考えてみましょう。
子どもと一緒に各部屋を見ながら、
- 家具が倒れてこない場所
- 窓ガラスから離れた場所
- 頭を守れる机がある場所
- 出入り口を確保しやすい場所
などを確認します。
同時に、倒れそうな家具や落下しそうな物がないかも点検しましょう。
内閣府は、家庭で緊急地震速報を見聞きした場合、頭を守って丈夫な机の下など安全な場所へ移動し、慌てて外へ飛び出さないことなどを紹介しています。
「地震が来たら机の下」と覚えるだけでなく、「なぜそこが安全なのか」を一緒に考えることが大切です。
2.ハザードマップを一緒に見る
ハザードマップを使って、自宅や学校の周辺にどのような災害リスクがあるのかを確認します。
チェックする内容は次のとおりです。
- 洪水の浸水想定区域
- 土砂災害警戒区域
- 津波の浸水想定区域
- 指定緊急避難場所
- 指定避難所
- 避難経路
子どもに地図を見せながら、
「家はこの辺りだね」
「川があふれたら、どの道を通れば安全かな」
と問いかけてみましょう。
地図が難しい年齢の子どもには、自宅や学校、公園など、知っている場所から説明すると理解しやすくなります。
3.避難場所まで歩いてみる
ハザードマップで確認した避難場所まで、家族で実際に歩いてみましょう。
歩きながら、次のような場所を確認します。
- 倒れそうなブロック塀
- 狭い道路
- 崖や斜面
- 川や用水路
- 冠水しやすい道路
- 落下物の危険がある建物
- 夜間に暗くなりそうな場所
内閣府が紹介する「ぼうさい探検隊」でも、子ども自身が地域を歩き、危険な場所や防災施設を見つけて地図にまとめる方法が取り入れられています。
いつもの散歩を「防災まち歩き」に変えるだけでも、立派な防災教育になります。
4.非常持ち出し袋を一緒に準備する
非常持ち出し袋の中身を、子どもと一緒に確認しましょう。
例えば、
- 飲料水
- 非常食
- 懐中電灯
- 携帯ラジオ
- モバイルバッテリー
- 救急用品
- マスク
- ウェットティッシュ
- 雨具
- タオル
- 常備薬
などがあります。
ただ品物を見せるだけでなく、
「これは何に使うと思う?」
「停電したら、どれが必要かな?」
と質問すると、備える理由を考える練習になります。
子ども用のリュックには、重くなりすぎない範囲で、水やお菓子、ライト、笛、連絡先を書いたカードなどを入れておくとよいでしょう。
5.災害時の連絡方法を練習する
災害時には、携帯電話がつながりにくくなることがあります。
家族で次のことを決めておきましょう。
- 家族の集合場所
- 自宅へ戻れない場合の避難先
- 連絡が取れない場合の対応
- 遠方の親族など共通の連絡先
- 災害用伝言ダイヤル171の使い方
- 災害用伝言板の使い方
消防庁も、家族が離れているときに災害が起きた場合に備え、避難場所や連絡方法を事前に確認し、実際に避難経路を下見しておくことを勧めています。
一度説明するだけでなく、体験利用日などを活用して、実際に操作してみることが大切です。
6.クイズやゲームを取り入れる
小さな子どもには、クイズやゲーム形式で伝えると興味を持ちやすくなります。
例えば、
「地震が来たら、すぐに外へ飛び出す。○か×か」
「大雨のとき、川を見に行ってもよい。○か×か」
「避難するときに持っていく物はどれ?」
など、身近な場面を問題にしてみましょう。
消防庁の「防災・危機管理eカレッジ」には、低学年向け、高学年向け、保護者向けの教材があり、動画などで災害への備えを学べます。
日本赤十字社も、小学校低学年、小学校高学年、中学生・高校生と、発達段階に応じた防災教育教材を公開しています。
7.日常生活の中で繰り返す
防災教育は、一度話して終わりではありません。
日常生活の中で繰り返すことが大切です。
例えば、
- 台風が近づいたときに天気図を見る
- 大雨警報が出たらハザードマップを確認する
- 地震のニュースを見たら身を守る行動を話す
- 防災の日に非常持ち出し袋を点検する
- 散歩中に避難場所の標識を探す
など、身近な出来事を学ぶ機会に変えられます。
短い時間でも、繰り返し話すことで防災が特別なものではなく、暮らしの一部になっていきます。
年齢に合わせた防災教育の進め方

子どもの年齢によって、理解できる内容や適した伝え方は異なります。
難しい言葉を一度に教えるのではなく、発達段階に合わせて伝えましょう。
幼児期
幼児期は、短く分かりやすい言葉と動作で伝えることが大切です。
教えたいことの例は次のとおりです。
- 地震が来たら頭を守る
- 大人の話をよく聞く
- 勝手に外へ飛び出さない
- 火や川には近づかない
- 家族の名前や自分の名前を言えるようにする
ぬいぐるみを使った避難ごっこや、絵本、間違い探しなどを取り入れると学びやすくなります。
恐怖心を強く与えないよう、「怖い話」よりも「命を守る方法」を中心に伝えましょう。
小学校低学年
小学校低学年では、自宅や学校、通学路など身近な場所を題材にします。
- 自宅の安全な場所を探す
- 避難場所まで歩く
- 防災標識を見つける
- 非常持ち出し袋の中身を考える
- 家族の連絡先を覚える
など、実際に見たり触ったりする体験を取り入れると理解が深まります。
小学校高学年
小学校高学年になると、災害が起きる仕組みや地域の特徴についても学べます。
- 地震や津波が起きる仕組み
- 洪水や土砂災害の危険
- ハザードマップの読み方
- 警戒レベルと避難情報
- 災害時の情報収集
- 簡単な応急手当
などを一緒に調べてみましょう。
家族防災会議で意見を聞き、防災用品の点検などの役割を任せることも効果的です。
中学生・高校生
中学生や高校生には、自分の命を守ることに加え、周囲と協力する視点も伝えましょう。
- 外出先で災害に遭った場合の判断
- 登下校中の避難場所
- SNS上の情報の見分け方
- 家族の安否確認方法
- 応急手当
- 地域の避難訓練や防災活動への参加
など、より実践的な内容を話し合います。
ただし、災害時に他人を助けようとして自分まで危険にならないよう、まず自分自身の安全を確保することが基本です。
子どもに防災を伝えるときの注意点
怖がらせすぎない
災害の映像や被害の話を見せすぎると、子どもが強い不安を抱くことがあります。
災害の怖さだけを強調するのではなく、
「準備しておけば、自分を守りやすくなるよ」
と、備えることの意味を伝えましょう。
一方的に教えない
大人が答えをすべて教えるのではなく、
「あなたならどうする?」
「どこが安全だと思う?」
と質問し、子ども自身に考えてもらうことが大切です。
日本赤十字社の防災教育でも、「気づき、考え、実行する力」が重視されています。
間違いを責めない
子どもが間違った答えを言っても、すぐに否定しないようにしましょう。
「どうしてそう思ったの?」
と理由を聞き、一緒により安全な方法を考えます。
安心して意見を言える雰囲気が、自分で判断する力につながります。
家庭の状況に合わせる

乳幼児、高齢者、障害のある人、持病のある人、ペットがいる家庭では、必要な備えが異なります。
一般的な防災用品だけでなく、家族一人ひとりに必要な物や支援方法を確認しましょう。
小さな子どものいる家庭では、子どもの発達段階に応じた備えに加えて、家具の転倒防止など、子どもが一人でも安全に過ごせる環境を整えることが重要です。
家庭で使える防災教育チェックリスト
| 取り組むこと | チェック |
|---|---|
| 自宅の安全な場所を確認した | □ |
| 倒れやすい家具や落下物を確認した | □ |
| ハザードマップを家族で見た | □ |
| 避難場所と避難経路を確認した | □ |
| 避難場所まで実際に歩いた | □ |
| 非常持ち出し袋を一緒に点検した | □ |
| 家族の集合場所を決めた | □ |
| 災害時の連絡方法を決めた | □ |
| 災害用伝言ダイヤル171について学んだ | □ |
| 子どもが一人のときの行動を話し合った | □ |
| 家族防災会議を行った | □ |
| 定期的に内容を見直している | □ |
防災教育は「一緒に考えること」から始めよう
防災教育は、難しい知識をたくさん覚えさせることではありません。
家族で身近な危険に気づき、災害が起きたときにどう行動するかを一緒に考えることが第一歩です。
まずは、
「地震が来たら、この部屋のどこへ行く?」
「家族が一緒にいなかったら、どこで待ち合わせる?」
といった簡単な会話から始めてみましょう。
散歩をしながら避難場所を確認したり、非常持ち出し袋の中身を一緒に点検したりするだけでも、防災について考えるきっかけになります。
子どもが災害時に自分で考え、命を守る行動を取れるようになるためには、家庭での繰り返しの学びが大切です。
無理にすべてを教えようとせず、年齢に合わせて少しずつ取り組んでいきましょう。
まとめ
防災教育とは、災害の知識を学ぶだけでなく、自分や周囲の人の命を守るために考え、判断し、行動する力を育てる取り組みです。
家庭でできる防災教育には、次のような方法があります。
- 自宅の安全な場所を探す
- ハザードマップを見る
- 避難場所まで歩く
- 非常持ち出し袋を一緒に準備する
- 家族の連絡方法を決める
- クイズや動画で楽しく学ぶ
- 日常生活の中で繰り返し話す
防災教育に、特別な授業や難しい教材は必要ありません。
今日の食事中や散歩の途中に、家族で一つ防災について話すことから始めてみてください。
小さな学びの積み重ねが、いざというときに子ども自身の命を守る力になります。
総務省消防庁
👉 防災・危機管理eカレッジ
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